キミは聞こえる

「…………ずっと」
「あ?」

 涙を拭く小野寺の手が止まる。

 彼の大きな手が頬に添えられたまま、佳乃は蚊の鳴くような声で打ち明けた。

「ずっと、ずっと、すきだったよ。……だけど、言えなかった」
「言えば俺が周りに変な目で見られると思ったからか?」

 頷くと、ため息が落ちてきた。
 そして、

「!?」

 突然、まぶたにふわっとやわらかなものが落ちてきて、かと思うとそれはすうと滑るように佳乃の目尻で止まり、軽く吸うと、離れた。

 それが小野寺の唇だったとわかった瞬間、佳乃はその場にへなへなと崩れ落ちそうになった。

 ぱくぱくと金魚のようにだらしなく口を開け閉めする佳乃を横目に、小野寺は自身の口端についた涙を舌先でぺろりと舐め取る。

 それを見た途端、体中の血という血が一斉に沸騰した。

「……っのでら、くん…ッ」
「てめぇのそういうとこが嫌いなんだよ! うじうじとくだらねぇこと考えてんじゃねぇ。周りの連中が俺をどう見ようと俺は気にしねぇ、そんな小せぇ男に見えるかばか」
「で、でも……」
「おまえと一緒にいることで新たに俺を嫌う連中が現れたら勝手に嫌わせておけばいい。そんなクズ共、いちいち気にすんな。だいたいな、俺がどう思おうとそれは俺の勝手なんだ、てめぇが否定する権利なんてねぇ。そんくらいわかんねぇのかよ」
「困らせたく、なかっ、た…。私と、同じつらさを、小野寺くんにも味わわせるなんて、できないよ」

 ばかやろう、と呟いて、小野寺は佳乃の手を取った。

 子供のそれを撫でるように指を優しく優しく滑らせる。

「そんなのちっともありがたくねぇよ。一緒にいて、苦しみを和らげてほしいくらいの甘えは見せらんねぇのか。……可愛げのねぇ」
「ご、めん、なさい……」
「今日からは改めろよ。俺にここまで言わせておいてまだぐずぐず言うつもりならもう二度と口利いてやんねぇ」

「ええっ!」