キミは聞こえる

「尚也に、あげちゃおっかなぁ」

 弟の誕生日は七月のはじめである。もう間もなくだ。

 中学生は装飾品の一切を身に着けてはならないことになっているため、携帯のストラップにでもするだろう。

 ため息を吐きながらがっくりと肩を落とした、そのときだった。

「―――おい、それ……っ!」

 突然、後ろから左腕を掴まれた。

 振り返る必要なく、腕を引かれる力で気づけば向きが変わっていた。

 夕焼けの眩しさに目を細める。

 その目が、たちまち眼球が飛び出すかというほどの勢いで見開かれる。

 彼女の目の前には、確かに別の道を行ったはずの小野寺がいた。

「な、ななな、なんで、おのでら、くんが…っ」

 振り払うように小野寺の手を逃れ、両手を背に隠す。

 心臓が破裂せんばかりに暴れ出す。握りしめる手に汗が滲む。

 小野寺の顔をまともに見れず、ぎゅっと目を瞑る。こみ上げた涙が佳乃の睫毛を濡らした。

「なんとなく様子がおかしかった気がして戻ってきたんだ。そしたら、おまえがそれ垂らしてるのが見えたから。それって、ミサンガだろ? もしかして、俺に―――」
「ちっ、ちがう! これは、ミサンガなんかじゃ、ないのっ」
「じゃあ見せてみろよ」

 やや乱暴に掴む小野寺の腕を身体を捻って振りほどこうとするも、日々鍛えている男の力を前に佳乃の抵抗などまるで無意味らしく、簡単に前に持ってこさせられてしまった。

 握った拳の端からは握りすぎてくたくたになったミサンガがはみ出していた。