キミは聞こえる

「呼び出すまでもねぇって思ったんだ。けど、どうしても直接報させたくてな」

 ……これ以上、いたずらに期待をさせないで、と思う。

 単純なヤツなのだ、私は。

 優しい言葉をかけられると、そんなはずはないとわかっていても、もしかしたらと考えてしまう。

 抱いてはならない期待に頭をもたげてしまいそうになる。

「あ、ありがとう」

 どうして、と訊きたいのに、訊けない。

 何故、直接言いたいと思ったの?
 電話だって、メールだってあるのに、どうして呼び出して伝えようと思ったの?

 淡い期待が佳乃を惑わせる。胸が、喉が、痛い。

「俺、ぜったい活躍してみせっから」

 ……まただ。

 今日の小野寺は、いつにも増して佳乃を狂わせる。

 もうやめて。

 そうじゃないと、左腕に巻き付けた鎖を自分で緩めてしまうから。己への戒めが脆くなってしまいそうだから―――

 ………だから、お願い。


 もうやめて、小野寺くん。


「応援、してる。きっと、活躍できるよ」

 毎日あれだけ頑張っているのだ。

 一年生であれだけ活躍できれば充分だ、などという褒め言葉が失礼に値するほど、彼は当日きっと誰よりも活躍できる。

 ボールを自在に操り、風のように芝生を駆って、相手チームの度肝を抜く姿が佳乃には見えている。

 公園の入り口まで肩を並べて出てくると、どちらからともなく二人は足を止めた。

「来週テストなのに、忙しいときに呼び出して悪かったな」

 ふるふると佳乃は首を横に振った。

「大変なのは小野寺君のほうだよ。時間ないのに、呼んでくれて、ありがとう」
「いいんだ。俺が、そうしたかったんだ。……なぁ、栗原」
「な、に?」