キミは聞こえる

 なんだよこのタイミング! 誰だこの抜群に間の悪い奴! 
 心の中で愚痴りながらとりあえずメールを開く、と―――。

「しっ、しろ―――」

 つい声が出てしまい、慌てて口を押さえる。

 送り主は、まさかの代谷だった。


[ピンクと黒、どっちが好き?]


 動いていた足が、我が家を目の前にしてぴたりと止まった。
 奥から風に乗って流れてくるゲームの音。やってるのはたぶん康士だ。テストが終わってからというもの康士は家に帰れば憑かれたようにゲームをやっている。
 代谷もやっているシリーズ五作目となる格闘ゲームだ。テスト中、母親に奪われてしばらくの間やれなかったことへの反動だろうか。

 携帯に視線を落としたまま、考える。

 考える。

 考えるが、しかし。

 いくら考えども、考えども、


(わ、わかんねぇ……)


 質問の意図がちっとも読めない。
 いったいなにを訊いているのだろう。

[心理テストか、なんかか?]

 とりあえずそうメールを返してみる。

[ちがう。ただ単に好みの話。どっち]
[そりゃあ男だし、黒だろ]

 まぁ康士なんかは好んでピンクのポロシャツやTシャツを着ているようだが、どうにも気恥ずかしいものがあり兄は袖を通す気になれない。

 とそこで、メールは来なくなった。
 それからもしばらく待ってみたけれど、返信はなかった。

 勝手に終わらされてしまったのだろうか。

 あいつらしいといえばあいつらしいが、それにしても……

(あまりに一方的過ぎやしないかね……)

 鼻の奥がツンとする。目頭がじわりとした。天を仰いでなんとか堪える。

 ああもう、なんでこんなに涙もろいんだろ。
 俺って、こんなに感情的なやつだったっけ。