キミは聞こえる

「それでまたあいつはなにも言えないままだったんだろうな。どうして代谷が助けたってわかったんだ?」
「決めつけんなって。多分って言っただろ。助けたと思うのは、俺の勘なんだ。本人に訊いたけど、違うって否定されちったし。けどさ、俺は絶対、代谷が栗原を救ったんじゃないかって思ってる。

 合宿一日目の夜な、代谷と栗原が俺たちの部屋に尋ねてきたんだよ。そんなんで犯人が名乗り出るわけねぇって思って、事実そうだったんだけど、代谷って、なんか不思議な雰囲気もってるだろ? 俺たちの顔見ただけでわかったみたいだったんだよな」

「犯人がか」
「さぁ、どうかな。なにもかもが曖昧で、俺もはっきりとは言えないことばっかなんだ。あいつが知ったのが犯人なのか、財布の隠し場所を探し当てたのか、それはいまだにわからないままだけど、代谷がなにかをしたんだって、俺は思ってる」

 代谷はなにをしたのか、どうして、なにを知ったのか。すべては彼女しかわからない。

 だが――、と桐野は思う。

 中学時代に築かれた栗原の孤立の基盤がますます頑丈なものになったであろう最悪の事態を、水際で防いだのは代谷以外には考えられない。

 ふぅと、ゆるやかな吐息が小野寺の口から漏れる。

「小野寺?」
「いや…ああ、うん。ようやく、そんなやつと巡り会えたんだな、と思ってさ。あいつも」

 しみじみとそう言う小野寺の横顔は、いままで見てきた小野寺淳とはまるで別人のように桐野の目に映った。

「おまえ、マジで、栗原が好きなんだな」

 小野寺はすこしだけ唇を尖らせた。

「だからそう言ってンだろ……」
「いや、だってさ、何回も嫌い嫌い繰り返すし、あげく馬鹿まで言い出すだろ。わかってても、ん? ってなっちゃうぜ」
「頑張ってる背中も、耐えてる横顔も、大丈夫、平気、ありがとうって我慢強い口癖も、ぜんぶ嫌いで、嫌いになれないんだよな。俺も頭こんがらがりそうだぜ」
「聞いてる俺が一番こんがらがりそうだ。あのさ、そんだけ気にしてやってんだったらおまえが守ってやればいいんじゃねぇの?」