キミは聞こえる

「そっ、そんな腐ったやつらがいるのか!?」
「おまえのクラスの鹿能(かのう)だっけ、あいつもけっこう頻繁に女子に声かけてるらしけどいまんとこ誰一人知ってるやついないんだってな」
「知られんの嫌がってる感じだったな…合宿んとき何回か訊かれてんの見たけど持ってないって言い張ってた。栗原は知ってるみたいだけど」
「そうか、栗原も」

 呟くようにそう言った小野寺の横顔が思いがけず温かい。

 次に小野寺の口から出てきたのは、それまでのやや"おふざけ"の混ざったものではなく、しごく真面目な言葉だった。


「……栗原が変わったのは、代谷のおかげだよな」

 
 桐野は静かに頷く。

「そうかもな」
「そうさ。だって、あいつ笑ってたぜ。一緒にいるとき」

 わかっている。

 好きだから特にだろうとはいえ、クラスの違う小野寺でさえ気づいて、同じクラスで掃除の班まで一緒の桐野に気づかないはずはない。

 栗原は変わった。

 彼女は、笑っている。

 びくびくしているばかりだった栗原がいまは代谷と楽しそうに喋っている。代谷が楽しそうかどうかは微妙だけれど。

 栗原は、以前の彼女ではなくなってきている。俺には、わかる。

 誰も気づこうとしないから、栗原はいまだクラスで危うい立ち位置にいるけれど、すこしずつ一部の女子とは壁が薄くなりつつあるように桐野は感じている。