キミは聞こえる

 あのとき、代谷にああ言われてたしかに悲しさと虚しさを覚えた自分がいたはずなのに、それ以上なにも言えなかった。

 問い詰めて鬱陶しがられるのが怖かった。
 問い詰めた先に自分の望まない未来が待っていたらと思うと、踏み出せなかった。

 代谷に限って、設楽と間違いが起こることはまずないだろう。本人もそう言っていたし。

 ……それでも、こんなに不安に思うのは、どうしようもなくて。

 祭に誘われたこと、あんまり予想外で、なにを言われたのかすぐにはわからなかった。
 だから、これが夢じゃないんだと気づいた瞬間、すごく、すごく嬉しくて、もしかしたら代谷も、なんて思い上がりも甚だしいくらい一人勝手に舞い上がっていた―――けれど、

 ……肝心なことを話してくれない相手が自分のことを特別な気持ちで見てくれているなんて、そんなはずはないと冷静になってから思い知る。

 告げる必要もないと、すべてを打ち明ける人物には値しないと、そんなふうに思われているとしたら。

 俺は、それくらいのヤツってことなのかな…。

 あいつのすべてを理解してやれる器が、俺には足りていないのだろうか。

 伸びてきた前髪をかき上げ、幾度目かのため息がこぼれる。

 風が吹いた。
 妙に冷たくて、冷たくて、仕方なかった。
 この前の晩も、冷たかった。鈴森の夜風は、いつだって鋭い冷気を隠してる。

 ――それでも。

 触れ合った頬。隙間なく抱き寄せた胸。代谷を包んでいたあのときだけは、夜の寒さを感じなかった。感じている余裕がなかっただけかもしれないけれど。

 あのとき、代谷はなにを感じていたのだろう。

 すこしは、俺の想いに、気づいてくれただろうか。

 学校で会っても、通学路おはようと声をかけても、ちっとも動揺する素振りはないけれど。そんな乙女乙女したやつじゃないことはわかってる。
 だけど、なにか反応が欲しくて、すこしでもいいからぎこちなくなったりしてほしくて、苦い思いを抱きながら目で追ってる俺に、


 どうか、気づいて……。