キミは聞こえる

「ただいまぁ~。腹減ったぁ…今日の飯なに――――――って、ええっ! な、なんで代谷さんが家(うち)に!?」

 今日でテストが終わり部活がいつもどおりはじまったという康士は誰よりも遅く帰宅した。
 久しぶりの部活によるものかそれともテストによるものか、疲労の滲んだ声と、引きずるような足取りで居間に現れた康士は、泉の存在に気づいた途端、眠たげな顔を一変させた。

 目を見開き、固まっている。

「お邪魔してます」
「代谷さんち、皆さんで結婚式に行ってらっしゃるんですって。灯り、点いてなかったでしょ」
「え? あ、ああそう? そうだったかな。気づかなかった」
「鈍いわねぇ~。早く着替えて手、洗ってらっしゃい」
「う、うん」

 母に肩を叩かれた康士は返事をすると慌てて二階へ駆けていった。

「食べてるかい、泉ちゃん」
「はい」
「あんまり進んでないみたいよ。どんどん食べてね」
「ありがとうございます」

 温めてきたらしいおそらく康士の椀を手に桐野の母は戻ってきた。康士がどたばたと足音を鳴らして階段を下りてくる。

「代谷さんが来てるからご馳走なんだ」
「失礼ね。いつもご馳走でしょ」
「そうですねそうですねっと。いっただきまーす!」

 みるみるうちに減っていく大盛りの白米。
 食卓中央に並べられた山のような総菜類に次々と箸を付け、自分の側の山を着実に削り崩していく。

 悠士も桐野も凄まじい勢いで己の分を片付けていくけれど、弟もまったく負けていない。
 がたいのいい悠士はともかく、わりと細身の下二人のどこにそれほど食物のはいるスペースがあるのか不思議でならなかった。

 彼らより一回りほど小さいとはいえ、普段使っている茶碗の二回りほども大きい。持つ手が重みでぴくぴくする。

 泉は取り分けてもらったグラタンを口に付けた。