キミは聞こえる

 たしかな目標を持ち、自分を叱咤させるくらいの他人への嫉妬を覚え、もっと頑張ることをすれば、3番とか2番とか、そんな半端な順位で「まぁそんなもんか」なんて言わない。

 悔しい、あとちょっとだったのに、次はきっと1番を勝ち取ってみせる。

 その言葉が、何故でてこない。
 何故、満足も、敗北感も、畜生とも感じない。

 ピンと伸びた1という数字。輝かしく、誇らしく、誰しもが憧れるもの。
 1は桐野の言う全国大会とほぼ同じ意味を指すのだろう。

 勝ち取りたいもの。
 日々厳しい練習に耐え抜いて耐え抜いて耐え抜きながらその手にする日を待ちわび、待ち焦がれるもの。烈しい想い。

 胸を焼き尽くすほどの想いを、桐野は部活中、いつも燃えたぎらせているのだろう。

 鈴森南高校で1番を取っても、やはり泉の心は満足せず飛び跳ねることもなかった。

 栄美で1番を取ればそれは名誉あることだ。入学後試験であろうと、試験であることに変わりはない。

 しかしそれでも、自分はすこしも喜びはしないのだろう。

 2番も、3番も1番も、なにも変わらない。県大会も、地区大会も全国大会も、なにも違わないと………そんな、愚かな考えを抱くのだろう。

 なんの目標もなくただ気づけばいつも桐野が欲すものにもっとも近い位置にいる泉と、夢と勝負に向けて毎日精進し汗にまみれる選手と、どちらが美しいだろうか。


 急に、桐野の隣を歩いていることが苦痛に感じられた。


「桐野君てさ、一所懸命だよね」