……私は、背伸びをしていたのだろうか。
首を振る。そうではない。
大人への憧れともどかしさに翻弄されながら見えないどこかへ一所懸命に手を伸ばす子供のように、大人ごっこをしていたわけではなかった。
すべてに背を向けて、離れたところから周囲を眺めていた私は―――
……ただの、愚か者だったのだ。
「桐野くんと似ちゃうけど、私は、私の話を聞いてくれる人がいてくれたらいいと思う」
そしてそれは、私が気楽に話せる相手に限られてしまうのだけれど。
私の声に、耳を傾けてくれたら。
真摯に、私の言葉を待ち、聞いてくれる男性(ひと)がいてくれたら。
悪くはないかも知れない、と思う。
「設楽は、そいつには当てはまらない?」
「愚問。あの人に私の話を聞く姿勢なんかないし、それ以前に、あの人の存在を知ってから面倒なことばっかり起きてる。うんざりする」
そう、うんざり。
あいつが現れてからろくなことがない。健康そのものの自分がなぜひと月に二回も気を失わなければならないのか。
サッカーボールが直撃したのだって、設楽と会話をしてさえいなければ避けれたかも知れないではないか。
と考えて、即座に、それはどうだろうと疑問を持ち、自信を無くす。
仮に、授業に集中していたとしてもまぁ……無理だろう。なんたって、運動音痴である。ボールの餌食は免れまい。
あいつに出会わなければ気絶は一回で済んだのかも知れないのに、に訂正だ。

