キミは聞こえる

 せっかちなやつだなと思いながらそれでも親切に場所を空けてやると――

 空けようとしたところで、

「おまえさ……もう設楽のことは、なんともおもってねーの?」

 目を反らして、桐野はそう言った。

 心なしか、瞳が暗い。
 否、顔全体がうっすらと翳りを帯び、いつものバカみたいな元気さはなりをひそめている。
 そのせいか、こんなに近くにいるにも関わらず、妙な距離を感じた。

「いきなりどうしたの」
「質問に答えろよ」

 やや厳しい口調で言われ、驚き、すこしムッとした。

 心配してくれているのかも知れないけれど、どうして責められるような言われ方をされねばならぬのか理解できない。

「思ってないとおもう?」

 だから今度はこちらも挑戦するような口ぶりで返してみる。

「……ほんとうか?」

 泉の苛立ちを察してか、桐野は具合が悪そうに床に視線を落とした。

「ほんとう。男としても、人としても、認めてない」

 認めているのはただ一つ。
 読心に関する力のみだ。

 それ以外において、あの男を肯定できる要素などないと断言できる。

「ほんとうだな」
「……嘘だとでも言いたいの?」
「いや、そうじゃねぇけど……」
「けど?」

 なんだよ。
 じーっと男を見据えたまま無言で問い詰めると、桐野は重たい口を薄く開いた。