キミは聞こえる

「……それは、私にもできること?」
「代谷サンは相手を狙って心をのぞくことが出来るよね。それはもう繋ぐことの第一段階をクリアーしていることに外ならない」
「……あとはどうすればいいの」

 尋ねると、設楽はコップに口を付け、味わうように麦茶を流し込んだ。もったいぶるな、と思った。
 あとちょっと設楽のコップを手離すタイミングが遅ければ泉に力づくで奪われていた。


「自分の心を開くことだよ」


 声が詰まった。
 設楽の言葉は、これでもかというほどに重くずしんと泉の胸にのしかかってきた。

 聞かなかったことにしてしまいたいと思った。

 そんな難題、テストなら真っ先に捨てる。はじめから無理だとわかっているものにいつまでもうじうじとしがみついていては、他の点が取れるものも取れなくなる。

 だが、そう容易く放棄できないなにかがそこにはある。

 高すぎる壁。高すぎるハードル。自然、引き返したくなる。


 無理だと決めつけるのか―――泉。


 どこかでそんな声が聞こえた。
 乗り越えたいのだろう。
 過去の無力な自分を思い出すたび、胸が疼くのだろう。
 翔吾を放ってはおけないのだろう。

「心を、開く……」
「そうすれば、自分の声を相手に送ることが出来る」