キミは聞こえる


 乗り越えなければ―――。


 面倒くさがり屋の自分から出てくるとは到底おもえないセリフが頭に浮かんでくる。

 確信などない。けれど、

 これは自分に科された試練なのではないか

 そう―――理那の背中、翔君の横顔がちらつくたび、胸が熱くなってくる。
 受け入れなければ―――。

 そうすれば、私も。

「その子の心を傷つけるようななにかがあって、それで心を閉ざしてしまった、とか」

 設楽の声にはっと我に返る。

「なにかって?」

 尋ねると、設楽は首を振った。

「だからなにか、だよ。それはわからない。せめてその子の両親とか、看護士から話を聞ければなんらかの解決策は見つかるかも知れないけど」
「それはプライバシーに関わる」
「でしょ。わかってるよ俺にだってそのくらい。……あれ、なに、その疑わしい目つき。俺にプライバシー云々を語る資格はないとでも言いたげだけど」
「別に。思うんだけど、口で言ってなにも響かないなら、心で話しかければもしかするとなにかしらの反応が返ってくるかもしれない。そうは考えられない?」

 設楽の顔にほんのすこしだけ真剣みが加わる。

「……口頭よりさらに直接にってことだね?」
「そう。心に直接声を届けられれば、もしかしたらもしかするかもしれない。耳を介して届かないものも、さすがに無視できないでしょ」
「無視される可能性はないともあるとも言い難いけど、驚きはするかもしれないね」