―――自分のためだけとか、意味のないことにだけとか、そんなことには力は使わない。
設楽の言った言葉が泉の身体の中心に容赦なく突き刺さり、刺した部分を深く抉る。
うまく言葉を発せない桐野の祖母の声を聞いたことは、無意味なんかじゃなかった。佳乃の財布を見つけたことだって、意味はあった。自分のためにというのが大前提だったけれど結果的には彼女のためにもなった。
佳乃が濡れ衣を着させられ、白い目を向けられるのを防ぐことが出来たのだから。
けれど、
宝探しのときの自分の行動は、あれは、自分一人のためだけだった。班員のためなんて言ってみても、それはやっぱり言い訳にしか聞こえない。設楽には、わかっているだろう。
泉がズルをしたことを。
それを執拗に咎めたり、非難したりしないのは、それが泉の力に対する向き合い方だと納得されているからか、それとも泉に対する純粋な好意によるものか……などと考えると吐き気を覚えるが、この男のポリシーに外れた行為であることは確かだ。
あれだけ心を読むことが嫌だと首を振っていた過去の自分がどんどん薄くなっている。……そんな気がする。
自分の力に背を向けて鍵までかけた堅固な扉を、泉はすでに開けてしまっているのではないだろうか。
全開とまでは行かなくとも、ほんのすこし、のぞき見る程度に扉を押し開けて、無くそうと思って無くなることのない天恵の蜜をこのくらいならとこっそり啜っているのではないか―――そう思えてならない。
だからこそ、先ほどの授業で迷わずに設楽の心を読んだのだ。
使うべき場所では隠し、自分が必要になったときだけこっそり利用する。
そのくらいなら、この程度なら、だいじょうぶ、と。
……自分の弱さ、甘さに呆れる。
ほんの数年しか経っていないというのに、もうあのときの底冷えするような寒さと恐怖を思い出と処理するのか。
忘れることが出来るのか。
(……だけどやっぱり、翔君の問題はそこをなんとかしないと駄目な気がする……)

