キミは聞こえる

「別にその子が気になるから心を読んで甘い言葉をかけて励ましてるっていうわけじゃない。俺は、人を選ばない。悲しんでいる子がいたら、分け隔てなく肩を叩く。自分のためだけとか、意味のないことにだけとか、そんなことには力は使わない。だから自信を持って違うと言えるし、自分が特別であることにおごりも恐怖も後悔も感じない」

 果てしなく続く夏の蒼天のごとく清々しいまでの表情でそう言われ、虫酸が走った。

「……私に対しての当てつけで言ってるの?」
「そう思ったのならそう取ってくれても構わないよ。それより、この前俺に話があるって言ってたよね。ちょうどいいからいま聞くよ。このとおり俺たち以外には誰もいないし、このまま口で大丈夫だよ」

 どうぞ、と軽々しく促されても、声が詰まって出てこない。

 翔吾のことは気になる。しかし、これ以上怖い思いをするのは嫌だった。
 特別に染められ、己が己を洗脳し、冒していく。そんな自分になるのは、耐え難い。

 だが、もし設楽の言っていることがすべて本当なのだとしたら。

 自分が特別であることに後悔を感じない。
 そう思えるだけのことを自分はしているから。

 泉のように、箪笥の奥底にしまい入れ、必要になったときにちょっとだけ取り出すようなそんな姑息なことばかりせず、設楽のように堂々と使い、臆することなくふさぎ込む誰かに手を差し伸べることが出来たなら。

 ときおり流れ込む悪夢に怯えることがあろうと、誰かのために自分に自信を持つことができたなら。


(私も、この力を受け入れることが出来るのだろうか)