キミは聞こえる

「そう。半ば仕方なくって雰囲気だったけど、俺もなんか体調不良だし、って適当に言ったらじゃあ、って許してくれた。飲み物いる?」
 
 口の中はからっからで、唇も負けず劣らずの乾燥具合だった。
 なんだか妙に砂っぽい気もして、本当は喉から手が出るほど欲しいと思ったけれど、設楽に頼むのはいやだった。気が引けるとかではなく、いやだった。気合いで我慢する。

 根性で起き上がって泉は首を振った。

「いらない」
「意地張らなくていいのに。そんな都合よく媚薬とか持ってないからさ」

 寒気がした。
 さらりとなんてことを言うのだこの男。

「……じゃあ家に帰ればあるわけ」
「どうかな?」

 設楽は意味深げに微笑むとコップを差し出した。枯葉色の澄んだ液体が揺れる。

「麦茶。別に、なにも入ってないから。起きたら出してねって先生が言ってったんだよ」

 怪しいなぁと思いながらもとりあえず受け取り、腿の上に置いたままコップの縁に視線を落とす。

「……あんたは、怖いと思わないの」
「え、なにが。いきなり麦茶渡されると媚薬が入ってるか気にするってこと?」

 同じように麦茶をコップに注ぎながら、背中越しに設楽は聞き返した。
 盛大にため息を落とす。

「そうじゃない。その……なんて言えばいいの? あれの、こと」
「あれ? ああ、読心術? 俺は別に怖いなんて思ったことはないな。便利だし、使い方次第では人助けにもなるしね」
「普通の人は持ってないんだよ? 自分は特別だとでも思ってる?」

 ふたたび椅子に腰掛けた設楽はきょとんとして首を傾げた。

「特別のなにがいけないのかな」