(声が、聴こえない………?)
いやそんなはずはないと泉は慌てて意識を隣の部屋でお昼寝中だった少女へ移した。
≪くまさん待って、そっちは危ないの≫
だいじょうぶだ、ちゃんと聴こえている。なんの夢を見ているのかまったくもって見当がつかないが、いまのが口から発せられた寝言ではないことは確かだ。
もう一度、泉は翔吾少年へ向けて意識を向けてみる。
「な、んで……?」
やはり声は聴こえなかった。
どれだけ意識を飛ばしても、あともいとも聞こえてこない。確かに繋がっているはずなのに、無音の世界がそこにはある。
こんなことははじめてだった。
(悟りでも開いてるのか)
―――んなわけないか。
間髪入れず否定する。
小学二年生のうちから理解出来たらそれはよっぽどのことだ。わざわざ病院に来てまで無の境地に達する必要もないだろう。
ならばどうして。
「駄目だ……」
泉は緊張を解いてこめかみをぐりぐりした。
いくら集中しても、どうしても声が聞こえてこない。
(翔君て子、いったい何者なの)

