キミは聞こえる

 食堂はそこそこに繁盛していた。
 大半は入院患者の見舞客だ。その中にぽつぽつと看護士や医者も混ざっている。
 空いている席に座ると、待っててと言い置き友香は券売機に向かった。残された泉は手持ちぶさたに携帯を開いた。
 メールが一件来ていた。
 桐野だ。
 ゲームの誘いだろうかと思いながら何気なく開いてみる、と。

「明日から一週間康士が送り迎えするから家にいろ? なになに、これってもしかして進士から? あらぁ、あいつにしてはずいぶん気が利くことしてくれんじゃない。よかったわね泉」
「人のメールのぞかないでよ」
「人聞き悪いわ。故意に見たわけじゃないわ。たまたま見えてしまったのよ」

 ……なにを言っているんだ。

 どうどうと首を伸ばしていたではないか。そういうのはたまたまとは言わない。
 友香が運んできたプレートには二人分の飲み物とケーキが一つ載っていた。

「このケーキ、美味しいのよ。あ、もちろん運ばれてくるヤツだから病院手作りじゃないけどね」
「いいの?」
「私には可愛いはとこが届けてくれたお弁当がありますからね」
「ありがとう。今日も帰れないの?」

 セロファンを慎重に剥がしながら尋ねると、友香は首を振った。

「今日は定時で帰れる。てか、帰る。んで、風呂に浸かる。そのあと一緒に買い物行く?」
「夜に?」
「うん」

 マジかよ。
 と突っ込むまでもなく友香の顔はマジだ。

 泉より年上で、日々疲れが抜けきらないうちに仕事に出ている友香だが、現役の高校生よりずっとタフだ。感心するほど体力がある。

 さすがはあの悠士と付き合うだけのことはある、と泉は思った。