キミは聞こえる

「は? なにって、別になんでもねーけど」
「ただの友達でしょ。友達ならなにもそこまで躍起になって彼女を守らなくてもいいんじゃないかな。……もしかして」

 ―――桐野も代谷さんのことが好きとか?

 いやらしく口角を上げる設楽に桐野はやってられないとばかりにかぶりを振って自転車置き場へ向けて歩き出した。

 なにが、好きとか、だ。
 ふざけるのも大概にしろ。

 無視して帰ろうとするその背にまたもや設楽の声がぶつかった。

「代谷さんに桐野は不釣り合いだよ」

 とうとう堪忍袋の緒が切れた。

「だから俺は好きなんて一言も―――」
「おまえが彼女に特別な感情を抱いて、それでもし関係がうまくいったとしても、彼女はいずれ必ず桐野に不便を感じるようになる。なぜなら」


 なぜならおまえは、どう足掻こうとも彼女の気持ちを理解してあげられないから。


 悩みも、苦しみも、彼女の本当に考えていることは何一つわからないから。