キミは聞こえる

 ***

 一方その頃―――。
 小野寺が先に帰ったと言っていた桐野はというと、いまだ学校に残っていた。
 しかし、活動場所のグラウンドではなく、

「男の出待ちはあんまり歓迎できないな」

 桐野は待っていた。ある男が出てくるのを。昇降口で、部活が終わってからずっと。
 バスケ部の体育館使用時間がサッカー部の練習時間と重なっているのは知っていた。だから待っていれば見落とすこともないと、ここでやつが出てくるのを今か今かと待っていた。
 だが、間違っても出待ちなんて表現をしてほしくない。そんな心躍る気持ちでここにいたはずがない。

「ふざけんな」
「冗談も通じないほどなににそれほど気を立てているんだ? 桐野らしくないな」

 設楽は肩をすくめた。

「おまえのことだ設楽。俺はおまえに腹が立ってる。いい加減代谷をつけ回すのはやめろ」
「ああでもしないと彼女は俺を振り向いてくれないからね」
「ストーカーまがいなことをしてそれで代谷がおまえの気持ちに答えてくれると本気でおもってんのか」

 もし本気で思っているのだとしたらそれはよっぽど重症だ。冗談にもならない。この場で医者か交番に連れて行くべきだと思う。こいつのためにはもちろん、周りのヤツのためにも、もちろん代谷のためにも。

「思ってる」

 自信満々に言うことじゃない。