キミは聞こえる

 誰かに話す気などさらさらないけれど仮に話したとして、興味を持つやつなんていないだろう、と思った。いくら泉と親しくしているからとはいえ、周囲との関係が良好になったりはしていない。
 いまだ多くの人間が小野寺や桐野とは真逆の態度を取るし、変えようという意識もないのが現状だ。

 携帯がピピピと音を立てる。設定しておいたアラームが起動したのだ。

「あ、時間だ。そろそろ行かないと。ごちそうさま」
「病院だっけ」
「うん」

 友香に荷物を届ける役割はなかば泉の担当になりつつある。それまで届けていた達彦は退院したばかりだし、友香の母は家のことで手一杯だし、となると自然暇人代表の泉が向かわされるのは当然と言えば当然だ。病み上がりなのは泉とて同じだが、休んだ日がたまたま金曜日だったために土日を挟んだから体調は万全だし、ついでに今日月曜日は来週行われる土曜授業参観の振り替え休日のため気苦労をする必要がない。
 外出にはまったく問題はなかった。

「送ろうか?」
「病院まで? いいよそんなことまでしてもらわなくても、元気だって」
「そっか。じゃあまた明日、学校でね代谷さん」

 友香の真っ黒リュックを背負い、黒縁の伊達眼鏡をかけると、泉は頷いた。

「うん、また明日」

 すっかり慣れてしまった田舎道を泉は進んだ。