キミは聞こえる

「えっ、は、はいなんですか!?」
「……どうかしたの? さっきからなんか変だけど」
「そ、そうかな? そんなことも、ないとおもうんだけど」

 いや絶対おかしい。
 なんだか妙に頬が赤いし、声は上ずり気味だし、なにより小野寺を見上げているときの佳乃の目と言ったらあまりにきらきらしていてそこだけが別人のようだった。

「……もしかして、今の人が好きとか―――んぐっ!」
「しっ、代谷さん!」

 図星か!

 泉の唇を潰すがごとくべっちりと手のひらで覆いながら顔を真っ赤に染め上げる佳乃。これほど露骨な反応をされてはさすがの泉でもわかるというものだ。
 佳乃の手を離させてパーカーの袖口で口を拭う。

「栗原さん、わかりやす……」
「だっ、だってしょうがないんだよ。……小野寺君のことになると、全然余裕なくなっちゃうんだもん」

 ふだんから落ち着きとはやや縁がないような生活をしているからな。
 好いた男が目の前に現れ、かつ話しかけられれば、佳乃のわずかばかりの平常心などあってないものだろう。
 可愛げがあると言えばそうなのだろうが、残念すぎ、とも言える。

「ひ、秘密、だよ」
「わかってるよ」