キミは聞こえる

『わ、たし……わるいことなんか、なにもしてない、のに……ッ! がんばることが、ここでは、あたりまえのはず、なのに。なんのために、ひっしでべんきょ、う、して、えいみにはいった、か』
『中間テスト、そんなにいい点数取れたの? あら2番? それはすごいわねぇ』

 すごいのは先生のほうだろう、と泉は思った。
 このような途切れ途切れの言葉からよくテストでいい成績を収めたことに結びつけたものだ。感心する。

『気のせいだったら悪いのだけれど、なんのために栄美に入ったかって………もしかして、誰かにわざとテストを失敗しろ、とかかなしいこと言われたの?』

 ああ、と泉は納得した。
 そうだそれだ。まちがいなくそれだ、と泉の中で勝手に結論を付けてあげる。
 それくらい先生の予想は当を得ていた。
 さすがは保健室を任されるだけのことはある、と拍手を送りたいぐらいだった。

 もやもやしていたすべてが彼女の一言で一気に吹き飛び、心の中に晴天が広がる。同時に、全身から力が抜けていくのがわかった。

(わたし、じゃ…なかった)

 シーツを掴む手を緩める。掴んでいたその部分だけがやたらしわくちゃになっていた。

 そもそも―――。
 ろくに話したことのなかった五十貝に恨まれ、ライバル視されることがおかしいのだ。意識されているという雰囲気は微塵も伝わってきたことがなかったし、こちらとしても気にしたことなど一度たりとも無かった。

 泉が悩み苦しんでいたのは単なる杞憂だったのだ。事件は五十貝と理那そして彼女らの所属するグループ内で起こっていたのだ。