キミは聞こえる

 涙声だった。
 それも、またしても聞き覚えのある声。クラスメイトの声だった。
 クラスメイト。その単語にやたら敏感になっていた泉は、びくりと肩を揺らした。息を詰めて、会話に聞き耳を立てる。

『具合でも悪いの』
『そうじゃ、ないんです、けど……でも、もう私、クラスに、戻れなく、て……ッ』
 
 入ってきたときからそうだったが、少女の声は話すうちにますます弱気なものになり、それまでも聞き取りずらかった声は拾うのがいっそう難しくなった。
 
『戻れないって、どうして』

 キィと先生がイスを引いて立ち上がる。『なんの事情もないのにここに置くことは出来ないわよ』

 そう先生が言った直後だった。
 いきなり生徒が声を上げて泣き出したのだ。うわんうわん周りを気にせず声を上げて泣く。ちょっと頭に響いて痛いくらいの大声だった。
 あらまぁ困ったわね、泣いてたらどうしたのかわからないじゃない、と先生が生徒をなだめる間、泉は声の主を思い出そうと試みた。

 絞り出した数名の少女のなかで、一人、もっとも正解に近いだろうと思い当たる生徒がいるのだが、今、保健室で人目も憚らずわあわあ泣いている少女とその者が最後の最後でどうにも一致しないのだ。
 名前は、二嶋理那(にしまりな)。中学から栄美に入ってきた泉のクラスメイトだ。
 入っているのは、五十貝(いそがい)という生徒を中心に成り立ち、クラスを仕切っていたグループだった。

 声は理那にそっくりだった。しかし理那は人前で泣くというタイプではない。むしろ、相手を泣かせ、泣いている様子を見下し楽しむような、人道に外れた女だった。―――そう、亜矢嘉は言っていた。

 聞かされたときは、へぇそう、と別段とりたてて気にはせず、ただ、そんな子なのか、くらいにしか思ってはいなかった。

 しかし、こうも子供のように泣き喚かれては、気にしないでいることのほうが難しい。それが理那であろうとなかろうと、だ。

 ―――そういえば。