キミは聞こえる

『おい君!』

 その場にへたりと座り込むと、後ろから近づいてきていた駆け足が声と同時にスピードを増した。
 泉の傍らにしゃがみ込み、顔をのぞく。肩に触れて、男はかすかに目を見開いた。

『どうした。だいじょうぶか。立てるか』
『……』

 声が出なかった。
 頷いてはみたものの、床に手を着いても力が入らず、結局駆け寄ってきてくれた知らない教師の背におぶさり、保健室まで運ばれていくことになった。
 ベッドはすべて空いていた。
 廊下側のベッドに泉は下ろされ、『熱はないが震えが尋常ではないから安静をとって次の授業は休むように』と指示された。おそらくテストの疲れが出たのでしょう、と。
 
 タオルケットを巻き付けてもちっともあたたかくはなく、むしろ、じっとしているほうが"声"を思い出して泉は震えた。
 だがここで吐けば父に迷惑がかかる。迎えを呼ぶわけにはいかない。
 内側から杭を打たれているような激しい頭痛を奥歯を噛みしめながら耐えていると、奥の方から控えめにドアが開かれる音がした。
 引きずるように中へと入ってくる。

『どうしたの』
『すいません。休ませてもらって、いい……です、か』