「わかるなぁ、弟くん。それ、かなり必死だったんだよ」
「だと思うよ」

 顔を見合わせ、どちらからともなく噴き出す。
 それからひとしきり泉と佳乃は笑い合った。

 そのときだけは憎き設楽のことも、死んだ母のことも、
 そして、

 父が連れてきた後妻のこともすっかり忘れて、泉は笑った。