キミは聞こえる


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 写っているのがほかならぬ自分であるためどうとも言えないのだが、パソコンで拡大された写真はそれまで見せられた"微妙な"初夏よりずっとまとまっている感じがした。
 なるほどこうして見てみるとたしかにきちっと結い上げるよりいささか適当にくくったほうが即席っぽさが出てまさに「いまさっき結ったばかり」という雰囲気だ。それはつまり、午後になってから温度が上がったので邪魔だからあげた、ということを表している。暑いからその場でまとめたというゆるさが初夏らしい。
 うん、なかなかいい。
 また―――、
 予想通り逆光で顔はほとんどわからないから仮にこれで決定になってもまぁなんとかなるだろう。ふだん滅多に髪を結わない泉であるから誰に気づかれる心配もあるまい。

「おおー、予想以上の出来だよ! 自分で言うのもなんだけどめちゃくちゃいい! もしかすると部内で一番狙えちゃうかも……! こ、これ、提出用にしちゃってもいい!?」

 こちらも予想通り―――
 否、予想はしていたが、出来れば遠慮してもらう方向で進んでもらえたらいいと切望していたが、どうやらこの様子では難しそうである。
 いい? と一応訊いてはいるものの、ならば「嫌だ」といって聞き入れてくれるかと言えばまぁ、無理だろう。

 佳乃は一見大人しそうに見えてその実、泉といるとき限定で本性をあらわにするから。

 なんて面倒な女だ。

「……いいよ。いいけど、これが誰かについては絶対言わないでね」
「なんで? こんなに美人に撮れてるのに。部長も気になると思うな」
「部員が被写体だなんて格好がつかないじゃん。せめて余所の部員じゃないと」
「あぁ、それもそうか。うん、わかった。訊かれたらそのへんの生徒って言っておくよ」