キミは聞こえる


「手すりに左腕を乗せて。…そうそう、それで空を見上げるように首を捻って……あー行きすぎ行きすぎ、うん、そこ、そこ! おおっ! 恰好いいよ代谷さん!! 高校生だから空いた右手には開いた携帯を、と。―――よし完璧」
「……撮った?」
  
 首が痛い……。尻のタイルが冷たい……。

「まだだよ。もっと力抜いて」
(何様だよ……―――)

 佳乃がかちかちとカメラをいじり出したのを見計らいちらりと視線をグランドに向ける。と、そこには。

 ―――ん?
 あれは……。

(サッカー、部)

 桐野が、いた。

 黄色のゼッケンを付けて、ここからだとご飯粒くらいに見えるボールを懸命に追いかけている。
 周りのどろんこ青年たちの髪の毛も陽に焼けたかして一様に茶色が濃いけれど、それらよりやや髪色が薄いからすぐわかる。あの中には桐野の兄"悠士"もいるという話だがあいにくと彼は見つけられなかった。

 桐野がボールを取るとその瞬間どこからか黄色い声が弾けた。見ると、フェンス越しにサッカー部を見学している女子生徒がちらほらといるのがわかった。
 おそらく―――否、きっと、桐野目当てで来ているのだろう。

(青春だねぇ)

 頬杖をついて泉も無意識のうちに白と黒のボールを目で追っていた。
 ボールを追うと自然それを追いかける桐野も同時に追いかけることになり、視界のほぼ中心を行ったり来たり、ときには立ち止まったりしている。


 と、ふいにホイッスルが空気を切り裂いた。