キミは聞こえる


「―――……わかったよ。一枚だけだからね」

 懇願されて嫌々ながらも了承すると佳乃はぱっと顔を上げて微笑んだ。

「ありがとう!」

 そう言うと佳乃はなぜかカメラを置いて立ち上がった。
 は? と思った。
 一応の身だしなみにと前髪をいじっていた手が止まる。
 佳乃は続いて泉の背後に回ると「失礼」と断って彼女の髪の毛を束ね始めた。

「うわあ、代谷さんの髪の毛ふわふわぁ」
「ちょ、ちょちょちょっと待ってよ。なにしてるの」
「初夏と言ったらポニーテールだと思うの」
「いや、あの、わけがわからないんだけど。これってカメラの練習じゃなくて本チャンなの?」
「そうだよ。上手く撮れれば提出用にしちゃうつもり」

 しちゃうつもり、じゃないよ。
 泉は慌てて佳乃の手を押し離した―――離そうとすると佳乃に怒られた。「動かしちゃ駄目だよ! ―――よし、出来た」

 おずおずと頭に触れる。と、そこには多少いびつなポニーテールが出来上がっていた。
 佳乃は改めてカメラを手に取り、画面をのぞき込みながらなにかを調整しはじめる。

「制服の袖を肘のちょい下くらいまでまくって、そこの出窓みたいなところに座って」 

 もうどうにでもなってしまえ。やけになって泉は言われた通りに袖をまくり、腰を下ろした。

 ――――――どうせ。

 この角度でカメラのシャッターを切れば逆光で顔は入らないだろう。この写真が採用されるかはわからないのだし。

(なるようになれ)

 早く帰れるのならもうなんだってやってやりゃあ!