純情BABY

「お願いっ。教えてよぉ!!」








『こんな所で、何やってんの?』




半べそになりながら懇願してた私のすぐ近くから聞こえてきた声に、体がビクンと波打った。





声のする方を恐る恐る振り返る。





「……渋、谷……」




どうしてここに?と思い、すぐに理解する。
ここ、靴箱の前だった。




周りを見れば他にも生徒が私と渋谷のとりまきとのやり取りを見ていたらしく、人だかりが出来ている。




今登校してきたのか、騒ぎを聞き付けてやってきたのか、わかんないけど、こんな目立っているんだもん。そりゃ声かけないわけにはいかないよね。




あ…れ?





目の前にいる渋谷に何だか違和感を感じて、すぐにその違和感が何か気付いた。





怒ってるんでも呆れてるんでもない。




目の前にいる渋谷は、笑っていた。





その笑い方が…





『し、渋谷くん?なんだかいつもと違う気がするんだけど…』





人前で見せてた、嘘臭い笑顔じゃない。





『ん?いつもの俺ってどんなだっけ?』





優しく万人受けする笑顔とはほど遠い笑顔だけど、
本来の、素の渋谷の笑顔だと、思った。