『益田さん、家が近くて本当羨ましいわぁ。それじゃさよなら』

松嶋さんがしたり顔で言い放つのに今度は私の顔が引き攣る番だった。


「さようなら」



噛まずに何とかそう言えたのは、彼女としてのなけなしのプライドだと思う。
時間を巻き戻せるなら、数分前までの自分を殴ってやりたい。



そしてなぜ自分の家が学校のまん前って事実を忘れて松嶋さんに啖呵切ったのさ!って言ってやりたいよぅ!!


そんな出来もしない事を考えているうちに、さっさと2人は私の家の前から歩き始めていくから思わず



「し、渋谷っ!!」



焦ってつい大声で呼び止めてしまった。



『何?』



「な、何って・・・えっと、」



『どうかした?』


立ち止まって体ごと振り返り冷静に聞き返す渋谷に、と松嶋さん二人揃って歩く姿にどうしようもなく不安になったなんて言えるはずもなく。



「よ、呼んでみただけ」



そう言うのが精一杯の私に渋谷は首を傾げて



『用がないならもう行くけど?』



なんて言う。