これには和紗だけでなく隣にいる秋穂も、クラスメート達も驚きのようだ。


安斎が教室から出て行った理由は誰にも分からないが、安斎が女子達を見て教室から出て行ったことは、事実だ。


それは当事者と一部始終を見ていた人なら一目瞭然である。


故に女子達は訳が分からずに、どうしてかと仲間内で囁き合っている。


もしかして…これチャンス?


一方の和紗はお礼を言う場を確保したのではないかと、一人で考えあぐねていた。

もう少しで担任こと啓也が来てしまうが、今この時を逃してしまったら次いつお礼を言えるか分かったものではない。


だから。


「よしっ」


気合いを入れて立ち上がり、秋穂に出てくることだけを伝えて、先程安斎が歩いていった方向へと走り出した。