那智 Side



体力が回復して、おれは起き上がった。



するとそんなおれに、教室の扉から声がかかった。



「随分と……清々しい顔してるじゃねぇか」



その声におれは振り返る。



「……阿山さん」



おれでも見上げるほどの長身。



その長身のせいか、異様な迫力を感じる。



さすが……桐生の幼馴染だな、って思う。



「そうですね……長かった苦しみに解放された感じがします」





おれは高校に入る前から阿山さんを知っていた。



何故ならおれは阿山さんと同じ中学に通っていたから。



そして……おれが好きだった琴羽の兄貴だから。



「あいつは……強かっただろ?」



阿山さんのいう、あいつが誰なのか分かるのはそう時間がかからなかった。



「そうですね。……隙がなかったし。迫力もすごかったっすね」