【短】隣のお兄ちゃんと私

俺は、奈美に対して感じていたことを話した。


その言葉を噛み締めるようにじっと黙っている。



「…のに」



やがて呟かれた言葉は小さくて聞き取れなかった。



「ん？」



そう聞き返す俺をちらっと上目遣いで見ながら(思わず口付けそうになるのを必死でこらえた)、再び奈美は言葉を紡ぐ。



「お兄ちゃんに何も文句を言ったりしないのは、本当に不満がないからなのに」
「全く？」

「うん…だって、お兄ちゃんの全部が好きだから」



真っ赤になりつつそう言ってくれた奈美に対して、温かい気持ちが溢れてくる。


「で、でも、またあんな風に意地悪するのはダメだから！」



はたと思い出したようにそう主張するのが可愛くて、ちゅっとキスをしながら答える。



「それは約束できないな。あの罰は、俺にとってはとびっきりのご褒美だし」



その言葉にまた真っ赤になる奈美を笑いながら抱き締めた。