【短】隣のお兄ちゃんと私

まだへそを曲げているのか、全くこちらを見ようとはしない奈美に膝立ちでそっと近づいていく。



「奈美?」



思ったより近くから声がしたことにおどろいたのか、奈美の肩がびくっとはねる。



「怒ったのか?」



その問いに、むっと唇がつきだされたのが見えた。



「…怒ってたのはそっちじゃん」



不服そうな声にまた笑いがこみあげてくるが、さすがにこれ以上へそを曲げられるのは避けたいからこらえる。


ぽんぽんと、その形のいい後頭部を叩けば、なにかぼそっと呟いたのが聞こえた。


後で「ずるい」と言っていたのが分かったが、そのときは聞きなおしても何を言ったのか教えてもらえなかった。