【短】隣のお兄ちゃんと私

それからは私にとって試練の日々だった。


次の日、今度はどんなおしおきをされるんだろうと身構えていた私に対して、お兄ちゃんは



「奈美、俺の名前分かるよな?」



と、うっすら笑みを浮かべながら聞いてきた。



「え…け、賢斗…でしょ?」

「うん。じゃあこれからは『お兄ちゃん』じゃなくて、名前で呼びなさい」

「え、えええ!無理だよ〜っ!今までずっとお兄ちゃんだったのに…」



という言葉は飲み込まざるを得なかった。なぜなら、お兄ちゃんの後ろにまた般若が見えたから。



でも急に下の名前で呼ぶなんて、恥ずかしすぎる…。


そう思い、なんとか譲歩案を引き出そうと「お兄ちゃん…」と話し掛けたそのとき、またもや抱き寄せられ深く口付けられてしまった。



「あ、言い忘れたけど、今度から名前で呼ばなかったら罰だから」



さらっとそう言うお兄ちゃんは、ほんとーに嬉しそうだった。