【短】隣のお兄ちゃんと私

俺はあまり感情が表にあらわれない。


普段は冷たいといわれて嫌な思いもしていたが、このときばかりは平静を装うことの出来る自分の顔面に感謝した。変な話だが。


ーーキキキ


戸が開くのが、俺にはスローモーションに見えた。


そして、その先には…奈美がいた。


ふわふわした髪と大きな瞳はそのままに、それでも体つきはもう女性のそれで。愛らしさときれいさの同居した女性に成長していた。


自分の知っていた奈美と、今目の前にいる奈美が上手く一致せず、少し無愛想な挨拶になってしまった。


くそっ


最初は笑顔でと決めていたのに。


最初からこれでは目的を達成することができない。俺は焦る余り、ちらちらとこちらを伺う奈美に気づかず、黙りこくったままでいた。


飲み物とお菓子を用意され、奈美の部屋の丸いテーブルに向かい合って座る。


その外見からは意外なことに、すっきりと物のあまりない部屋で、俺たちはしばらく無言で向かい合っていた。