【短】隣のお兄ちゃんと私

そんなときだった。



「義人、あんた塾とか行かなくていいの?」



夕食時、母親が義人に尋ねたのは、学習塾の夏期講習のことだった。


すでに高3。今からでもやれることをやって貰いたいというのが母の考えだったが、義人は塾に行く気はないようだった。


何事も要領よくこなす義人のことだから大丈夫だと父がとりなしたのもあって、母は渋々引き下がっていたが、次の言葉に思わず俺が食い付いてしまった。



「お隣の奈美ちゃんも家庭教師つけるって言ってたのに〜」



俺は、これだと思った。


奈美に近づく絶好のチャンス。



すぐさま俺は母親を通じて、奈美の家庭教師の座を手に入れた。