【短】隣のお兄ちゃんと私

義人の話によれば、奈美は俺と女がキスするところを目撃。


そして、俺との埋められない年の差を自覚、このまま側にいるのはつらいから離れた…ということだった。


俺はそんな家の前で女とキスなんかしない。


思い当たるのは、あの日女装した友人がふざけて仕掛けてきたキス。ばっちり写真にも撮られて、いまでも仲間内で笑いの種となっている。


それを奈美は見たのか…


俺は思わず頭を抱えていた。


たったそれだけのこと。たったそれだけのことで、俺と奈美は何年も話さなくなってしまった。


奈美にとっては重大なことだったのだろう。俺も、距離のおかげで、自分の気持ちを自覚できた。


だけど、今まで無駄にした年月を思うと、あの悪友たちに対してふつふつと怒りがわいてくる。


いや、とりあえずあいつらをしめるのは今度にして、まずは奈美だ。


今までの距離を埋めるにはどうしたらいいのか。俺はそればかりを考えていた。