疑問を抱いたあたしに、パパは何かを思い出したかのように、「ああ」と声をあげた。



「きっとお孫さんだ。
大学を卒業して、海外で仕事をしている……って、噂を聞いてたけど。
戻ってきて、あの店を継いだのかな。
実は、パパも一度だけ彼に会ったことがあるんだ」


「え? そうなの?」


「ああ。
椿が生まれる前の年だから17年前かな。たまたま立ち寄った時、店に男の子がいたんだ。
たしか名前は……えーと岳(ガク)って呼ばれてたな。
あの時7つだって言ってたから、今は24ってとこか」


ふーん。

あの人、24歳なのか。

あたしより8つも年上なんだ。



名前は……“岳”。



それにしても……。


「よく覚えてるね。17年も前のこと……」


「あの日のことはよく覚えてるよ」