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女のバイクが見えなくなり、
いつもの静寂が戻る。


夕焼けにそまり始めた誰も居なくなった公園。


そこへヨチヨチ歩きの娘と母親が桜の下にフッと現れる。

娘が桜の木を指さし、母親の顔を下から覗きこむ。


「おっきい、きっき」

「大きい木だねー。桜って言うんだよ。さくらちゃんとおんなじ名前だね。」

「あたちとおんなじ!」

嬉しそうに無邪気に笑う娘。


「そうね、じゃあこの木とお友達になって、さくらちゃんも早くおっきくなろうね。」

「うん!」


娘はちいさな体をいっぱいに広げ、
桜の木に抱きついた。


「なかよくちてね」


と笑顔で見上げる。


…二人が夕焼けのオレンジ色の中へ消えていく。


夕焼け色に染まった桜の木が風で優しく音を立てた。


…少しだけ悪戯っ子の笑い声みたいに…