「いいえ、全く違います。あなたのようなアメリカ生まれの下賤な輩にはわかるはずもないのでしょうが、バトラーとは誇り高く、主人の最も近くでお世話をすることを許された特別な存在。ヨーロッパの貴族において、我々バトラーという存在ほど中世のひでぶっ!!」
 顔面に垂直に蹴りを入れてやったら、バーカウンターの向こうまで吹っ飛んでいっちまった。崩れた酒瓶の山に埋まって、見えなくなる。
「さて、じいさん。どうオトシマエつけてもらおうか。ええ?」
「はひぃ!」
 なんか変な声上げやがる。
「てかどーしてくれんのさ、あたしの○ナリーコス! こんなボロボロにしてくれてさー! 埃まみれだし、キモすぎくんなおやぢどもにベタベタ触られたりして! 妊娠とかしてたら、ホントマジありえんてぃーだから!」
「するわけねえだろ」
「それより、ミスタ・ストークス。さきほどの質問の答えを聞いていないのだが」
 ディルクの問いかけに、
「……」
 やはり答えようとしない。
「良いのか? 黙りこくっちまって。口割る気がねえんなら、身体に聞くしかねえぞ?」
 マンガみたいに、指をぱきぽき鳴らす。
「は、話せば、わしの身が危ない……」
「話さねえと、もっとあぶねえ目に合うぞ」
 脳天にP90を突き付ける。
「こいつは、俺たちを襲ってきた連中の一人が持ってたもんだ。ライフル弾をそのまま小さくしたような5.7mmっつー新型弾薬を使う、カービンでもサブマシンガンでもねえ、ベルギー製の高性能銃。当然、値も張る高級品。それに……」
 俺は腰の後ろにぶら下げていたゴーグルを取り出し、
「こっちはナイトビジョン。おまけに、第3世代型の最新モデルだ。軍用にしか出回ってねえはずなのに、なぜか連中の一人が使ってた。こんなもん、そこらのギャングやチンピラが手に入れられるはずねえだろ。それにだ、このカメラ」
 ディルクが取り出したカメラを指さし、
「こいつは監視カメラだろ? 病院中、いたるところに仕掛けてあった。これで、俺達の動きを監視してたんだろ」
「むう……」
「襲ってきた連中も、プロとはいかねえまでも、そこそこの実戦経験はありそうな感じだった。普段から訓練してるようなそぶりもあった。見当はついてんだ。素直に吐け」
 俺の言葉に、じいさんが口を開きかけた時、