ちなみに言っとくと、3階以上から飛び降りるのはNGだ。これは、火事なんかで逃げるときも同じだ。飛び降りるなら2階から。覚えておくと良い。
 3人で、全力で階段を駆け上がる。
「くっそ! なんなんだよ、上がったり下がったり!」
「とんだベガス旅行になったものだな」
「あ、それなんか、ちょー2時間サスペンスっぽい」
「いい加減黙ってろ!」
 まだリアクション取る余裕が残ってるのが唯一の救いか。2階のドアの前まで来た。ノブをひねってドアを押す。が、開かない。ロックされてるようだ。
「くそったれ! ついてねえ! なんで廃墟なのに、鍵なんかかけてんだよ!」
「ゲームの演出だろう?」
「わかってるよ!」
「ホント、ディルクって真面目だよねー」
 階下で派手な金属音。どうやらドアが破壊されたようだ。こんな閉鎖空間で大勢に追い詰められたら、まともに闘うこともできねえ。
「あかり! 斬れ!」
「また命令口調だし! あーもういい! さっさとそこどいて!
色々省略・断鉄《テツヲタツ》!」
 きんっ! と小気味良い音が響いて、堅く閉ざされていたドアが廊下側に倒れた。Xの字に斬られて。
「よし! 急げ!」
 3人、もつれるように廊下へ転がり出る。と、廊下の先から集まってくる数人の男たちの影。右からも左からも。要するにはさみ撃ちだ。
 当然、階段からも男たちが上がってくる。
「あー、ったく! 結局ヤるハメになんのか!」
 頭をくしゃくしゃとかき、
「俺右! あかり左! ディルク階段!」
「了解」
「りょ!」
「ぶっ潰せ! Yee-hah!」
 ド派手なサタデーナイトフィーバーが始まった。