「マジあとで金取るから。最近の相場ちょー高いよ? 法律厳しくなってっから」
「だから、してねえっつってんだろが!」
 人の話は全然聞いてねえくせに、自分の言いてえことだけはやたらしゃべりやがる。
「結局さー、なんなの? ストリートギャング捕まえるんぢゃなかったの? ホントにお金もらえんの? ねーねー」
「だから、うるせえってのに。こっから出たら全部説明してやっから、とりあえず黙って協力しろ」
「なにそれ? 毎度のことだけど、ちょー上から目線だし。あんたね、少しオンナゴコロとか勉強した方が良いよマジで。そんなんだから童貞とか言われんだって」
「だから、ちげーっつってんだろが! とにかく静かにしろ! 敵に囲まれたらどうする!」
「言ってる間に、一階に着いたようだぞ」
 ディルクの言葉に視線を戻せば、そこは階段室から廊下へと続くスチール製のドアの前。『Level 1』と表示されている。
「先導の意味なかったぢゃん」
「うるせえ。とにかく出るぞ。慎重にな」
「りょ」
「了解」
 ドアを押し開く。最初に見えたのは、目の前に居並ぶ5人ほどの男たち。全員カービンやらサブマシンガンやらをこちらに向けて、待ち構えていた。
 すぐさまドアを閉め、3人がかりでドアを引っ張りながら、結束バンドでノブを固定。その間横殴りの弾丸の雨が、ドアに向けて叩き込まれる。
「見ろ! お前がでけえ声でくっちゃべってたせいで、居場所モロバレしちまったじゃねえか!」
「なにさ! あたし一人のせいだって言うの?! ジルだってしゃべってたぢゃん!」
「お前が黙ってりゃ、俺だってリアクション取らんかったわ!」
「あーそう! あたしが悪いんだね! ごめんねごめんねー!」
「目ぇ見て謝れや!」
「コントしてる場合か!」
 珍しく、ディルクからするどいツッコミがきた。
 連中は、銃ではドアを破壊できないと悟ったらしく、全員でドアをこじ開けにかかった。
「とりあえず上に逃げるぞ!」
 ディルクの言う通り、こんなとこで遊んでる場合じゃねえ。1階がダメなら、もう2階に行くしかねえ。2階からなら、窓ぶち破って逃げることもできるかもしれん。無傷じゃいられねえかもしれねえが、まず死ぬこともねえだろう。