部屋の一番奥の隅に、まだ調べてねえ箇所があることに気づいた。物陰に隠れて、ライトが当たってなかったようだ。
 歩いて行って、ライトで照らす。奥まった箇所は、さらに奥に2メートルほど進めるようだ。その先に、ひっくり返った棚にさえぎられて見にくくなってはいるが、ドアらしきものが見える。
「ったく。無意味に散らかしやがって」
 散乱した粗大ゴミ(俺にはゴミにしか見えねえ)をまたぎながら、なんとかドアの前までたどり着く。
 ここまでかなりでかい音を出してたと思うんだが、あかりは全く気づく気配がねえ。
「さて、何が出るか……」
 ノブを握ってひねる。長年放置されてた割には抵抗もなく、ノブはすんなりと回った。
 さらにドアを押す。開かない。今度は引く。すると、ドアはあっさり開いた。
「これで出られりゃ、ラッキーだけどな」
 俺は素早くM4のマズルをドアの先へ向け、用心しつつその先へ進む。チンピラどもの罠かもしれねえ。もっとも罠にハメるつもりなら、とっくに後ろからズドンとやってただろうが。
 ドアの先はせまい通路だった。大人2人がすれ違うにも、道をゆずらなきゃならねえほどの。
 天井や壁には、太いパイプやらケーブルやらがごちゃごちゃと通ってやがる。おそらくここは、普段は使わねえ整備用の通路かなんかなんだろう。ってことはこの先は、設備室かなんかか。うまくすりゃ、他の部屋に抜けられるかもしれねえ。って、憶測に過ぎねえけどよ。
 それにしても長い通路だ。かなりルーメンの高いシュアファイアで照らしてるが、全然先が見えねえ。外から見たときはわからなかったが、この病院、かなりのデカさがあるようだ。ストークスじいさんが欲しがるのもわからなくもねえ。
 通路はどこまでも続く。ストレスがたまってきた。こんな暗闇を延々歩き続け、前も後ろも見えないと、精神がおかしくなっちまいそうだ。
 まあ、俺ら軍人や特殊部隊員ってのは、その手の訓練も受けてるから、多少なら問題ねえが。あかりだったら、ぎゃーぎゃーわめき散らしてたかもしれねえ。
 あいつは腕も立つし、確かに強いが、まだティーンネイジャーのガキだ。民間人だし、サバイバルの訓練なんかも受けてねえ。意外と、精神的にもろい面もある。いつもあんな調子だし、強さに隠れて忘れちまうこともあるが。