「お前の年じゃ、まだカジノに入れねえだろ。21になってからまた来い。それにほとんどのやつは損して終わる。俺だからできるんだ」
「なに? 自慢系?」
 ちょっと不機嫌そうな顔をする。
「はっきり言うが自慢だ」
「マジやなやつ。だからモテないんだよ」
「誰がだ! 勝手に決めんな!」
「あたしぢゃないもん。ウェブに載ってんの。『ブラッディ・ファングは、ちょーキモメンでモテない』とか『ドS過ぎて女ができない』とか『プレイが変態チックで何度もベッドから女に逃げられて、結局童貞』とか」
「どこの情報だ!」
 イスから立ち上がり怒鳴る。周りの注目を集めちまったが、とりあえず気にしねえ。
「だからウェブ中。世界中のSNSと板に載ってる」
「好き勝手テキトーなこと書きやがって……」
 座り直して、モヒートに口をつける。
「え? これって作り?」
「当たり前だろ!」
「でも今まで、ジルが女といたとこなんて見たことないんですけどー」
「そりゃ、お前が来てからの話だ。お前が来るまでは、普通にそこらの女と遊んでたりしてたさ」
「うわードン引きだわー。JKの前でそんな話するおやぢ、ちょー引くわー。なにげに過去の栄光にすがってる系だしかなりイタイわー。あわれんてぃー」
「説明しただけだろ! なにその反応?! しまいにゃ俺だって傷つくよ?!」
「いや知らんし」
「お前ホント、ロクな死に方しねえぞ……」
 残ったモヒートを一気に飲み干す。
「さて、それはそれとして。そろそろメインにいくとすっかね」
「うい」
「んで? カモさんはどこにおいでかな?」
「『奥』に入ってったまんま、出てきてないよ。発信器の反応が動いてないから」
「発信器っつったって安物だからな。ホントに大丈夫か?」
「だーいじょーぶだって。ホテルの監視カメラにもハッキングして、タブレットで映像確認してっから」
「そっか、なら信じよう。ディルク連れて中入るから、予定通りお前外で待機な」
「りょ」
 バフェィを出てクラップスの台へ向かい、ディルクの背中に声をかける。
「モウカリマッカ?」
「ボチボチデンナ」
 あらかじめ決めといた合言葉だ。ディルクからは『準備完了』の返事。いつでも『奥』へ入ることができるってことだ。
 俺はさらに言葉を続ける。