「あそこ。なんかバスタブみたいなとこで、サイコロふってる」
 コーラ飲みながら指差す先。バフェィからも見える台に、ディルクが背中を向けて立っている。隣に立ったどこぞのオバサンがダイスを2個、台に投げ込んだ。
「クラップスかよ。また手堅いゲームやってんな。ま、あいつらしいっちゃらしいけど」
「クラップスって手堅いの?」
 カニの脚を一度に3本もくわえてやがる。
「カジノゲームで唯一、ほぼ勝率フィフティフィフティで勝負できるゲームだ。ルールも単純だし、誰でもできる。ジャパンにはねえのか?」
「ないって。日本人でカジノゲームのルール知ってるやつなんて、ほとんどいないんぢゃね?」
「なんでだ? ジャパニーズはカジノで遊ばねえのか?」
「てかそもそも日本じゃカジノは違法だし」
「マジか。知らんかった。つまんねえ国だな」
「それは知らんけど。てかここのカニかなりヤバめ。ばりばり」
「殻くらい取れ」
 俺は近くにいたウェイトレスを呼び、モヒートをオーダーした。
「んで? 結局勝ったの?」
 こいつ的にそろそろ終盤なのか、フルーツの山に手をつけ出した。
「ああ、まあな」
「どんくらい?」
「20,000ドルが100,000ドルになった」
「5倍ってスゲくね?」
「スゲーさ」
「ジルってギャンブルの才能あるんだ。いっつもイカサマ勝ちばっかしてるから、ホントは弱いのかと思ってたけど」
「カードだけな。ダイスやルーレットは苦手だ」
「なんで? 同じぢゃねーの?」
「ちげえんだよ。読みがねえからな」
「ふーん。なんかよくわからんてぃー」
 モヒートが届いたので一口飲む。うまい。ここのモヒートは当たりだ。あかりはフルーツを食べつくし、今度はアイスに手をつけ出した。
「てかそんなに儲かるもんなら、あたしもガチでやってみたいんだけどー」