教訓。やっぱ人間、地道にコツコツ稼ぐのが一番だ。楽して儲けようなんてやつは、あれだ。なんかこう、人間として色々ダメな感じのやつだ。ロクなもんじゃねえ。うん。
 要するにあれだ。なにが言いてえかっつーと、うまい話にはほいほい飛び乗るもんじゃねえってことだ。あとで必ず後悔する。今の俺のように。つまりだ。俺は今、激しく後悔している。
 すまねえ、ママ。あんたの息子は、救いようのねえ愚かモンだぜ……
「てててか、ぶつぶつ言ってないでさー。ははは早く先行って欲しいんだけどー!」
 3人の持つマグライトで照らされただけの真っ暗な廊下。後ろを歩くあかりが、ぐいぐいと俺の背中を押しやがる。
「やややめろっつってんだろが! 押すんじゃねえよ! あぶあぶあぶちゃん危ねえだろ!」
「マジイミフだからー!」
「てててめえ、ビビってんだろ? そうだろ、ああ? ビビってブルって膝笑ってやがるから、俺にしがみついてんだろ? ええ?」
「は、はあ?! てか、ガチでわけわからんてぃー。なんもビビってないし。じじぢぢいジルこそ、マジビビっちゃってんぢゃないの? ほほほら、なんか震えちゃってるっぽいしー」
「てててめえ、なにさりげにぢぢいとか言ってんだこら! そそそんなに平気だってんなら、てめえが前歩けよ! さっさと行きたいんだろ? 前歩いて、先進めばいいじゃねえか!」
「いいいいやいやいや無理無理……ぢゃなくて、マジ全然よゆーなんだけどー。なんつーかほら、あんたらガイジンって男が女をエスコートするもんぢゃね? だからこーゆーとこは、当然男のあんたが先歩くのがマジフツーってゆーか。てか、あれだから。あたし、ホントマジビビり感とかゼロだし。別にあたしが前でもガチで全然のーぷろぶれむなんだけど、男のあんたに花持たせといてやろう的な? なんかそーゆー感じだし」
「無理して強がってんじゃねえよ! なななんだその、無理やり取ってつけたような理由!? べべ別に、男が女エスコートしなきゃならんとか、そんな決まりねえし。てか俺カリフォルニア出身だから、その手の東部の古い風習とか知らんし」
「とと東部? なななんかあれでしょ? あたしが日本人でその辺の事情知らないと思って、ちょーテキトーぶっこいてね?」
「ぜぜぜ全然? 適当なんてぶっこいてねえし」