あたし達はいつもの場所に
ひっそり隠れる
走りを見るための
特等席なんだ
族の人に見つかると怖いし
隠れて見る
「今日もMOONの人達かなぁ」
MOONとはあたし達が好きな
族の名前だ
族にしては珍しい単純な名前
でもあたしはMOONっていう
響きが大好きなんだ
「ねぇ君たち」
――…誰!?
若いキモい男が3人
あたし達に話し掛けてきた
“襲われる”
そう思ったあたしは
葵の腕をつかみ
その場から逃げようとした
「逃げても無駄に
決まってんじゃん」
1人の男が葵をつかみ
あたしもつかまれ
どうにもできなくなった
「ホテル行こうか〜」
キモいキモいキモいキモい
「やめてぇっ」
あたしは大きな声で叫んだ
