なんで、そんな
内部事情を知ってるんだ?

マイナス・イメージになる
事を社長が言う訳ないし。



「すまんな。あまりに返事が
遅いので痺れを切らせてしもた。
なーに、
今までと何ら変わりはない。
経営陣も一緒だ。ただ、ウチ
の人間は入れるつもりだよ?」


「は・・・・?」


「ああ、それと。事務所は
引越しする。新しい住所はほれ
・・ココじゃ。ウチの会社の
近所で交通の便もいい。」



会長の着物の懐で温まった、
B5サイズの
二つ折りの紙を俺に差し出す。
それには
地図と住所が印刷されていた。



「・・これは一体
・・ウチの事務所は!?」


「買った。」




老人はニヤアッと笑い、
自分を指差してる。

何を云ってるんだ?
それとも理解できない
俺がおかしいのか?



「買った・・・・?」

「そう、ワシがお買い上げ。」

「お買いアゲ・・あそばした。」

「平気か?
ワシの薬をやろう・・ほれ。
じゃ、ジュード君。
また会おう・・あっ!
シーちゃんに宜しく
云っといておくれよぉ♡」



(ソコだけ♡マークかよッ!
会って行きゃイイじゃねーかっ)



そう云って片手を上げた老人は
その時既に後姿で・・

どこからともなく現れた
お付の人が少し振り返り、
俺に会釈をしていた。

俺はハッとなる。
つまりそう云う事だと。



「ば・・買収したってのか・・!」



いともカンタンに、
「買った。」とか云いやがって。

あの言い草じゃまるで
衝動買いだ。

ショックで喫茶室の前で
ふらりと座り込んでしまう。

ヤンキー座りのまま両腕を
前へ投げ頭と一緒にうな垂れた。

ふと見た、手に握らされた小瓶。


「動悸・息切れ、
"気付け・めまい"・・フッ。」


"ワシの薬"が
"キュウシン"だった
皮肉なオチに失笑した。